2023.11.27 号
昨日、2023年最後のHappy Toco Liveを無事に終えることができました。「結成15周年」によせられたメッセージ集の第2弾を皆様にお配りすることできましたのも、大変にうれしいことでした。ほんとうに、おかげさまです。
ありがとうございました。
一方で……この1年ほど、めまぐるしく、音楽に向かう状況と心境が変化した年はなかったかもしれない、と振り返るような月日でした。皆様にとっては、どのような1年だったでしょうか?
1つ、直接的に関係する立場にはないものの、大変に象徴的かつ革命的と感じるトピックがございました。
日本に暮らす、いったいどなたであれば、2023年のはじめに、数か月後にはジャニーズ事務所が大々的な謝罪会見をし、その後社名を変更し、メンバーも次々脱離し、紅白歌合戦には事務所から1人も出ない、ということを、想像できていたというのでしょう?
何年も、どうにも動かなかったことが、音をたてて崩れていく、その成り行きの様相は、多くのかたに、さまざまなことを考えさせたのではないでしょうか。
どの時代にも、権力者によって本来の方向性が歪められたり、不本意なことを飲み込まなければならなかったり、“音楽”という、一見、そうしたものからは距離を置くこともできそうな分野においてさえ、なかなか純粋には事が運ばないことは、戦争中においてまさにそうであったように、ままあるものです。
だからこそHappy Tocoは、メンバーがつねに、自分たちが創りあげる音楽じたいを心から楽しみ、初心がそうであったように、ともに奏でることの幸せがまず第一にありますように、といつも願っております。
来年5月までのこの「結成15周年」の喜びを、いましばらくかみしめていたいと思う、この頃です。
(聡子) .
「象は鼻が長い」 パート2
前回の通信で、「世界で一番難しい言語は日本語」とお伝えしたが、その後、諸説あることが分かったので、ちょっと補足したい
英語を母国語とする人々にとって、書き言葉において日本語は確かに、中国語、アラビア語などと並んで最も難しい言語といわれるが、話し言葉では「世界一難しい」ほどではない
また逆に、日本語を母国語とするわれわれにとって習得が難しいとされるのは、ロシア語や、スペインとフランスにまたがる地域で話されるバスク語などといわれる
『「象は鼻が長い」の主語はなんでしょう?』 という問いかけもした
この文章を聞いて私たちは何の問題もなく理解することができるが、研究者の間では、大正時代から現代にいたるまで議論が交わされ様々な説がとかれている
同じ文言が、使われる文脈(場面や前後の文章)によっても意味が変化する
たとえば、「象は、鼻が長い(動物だ)」「(進化の過程で様々な鼻を持つようになった動物の中で)象の鼻は長い」「(鼻の長い動物は色々いるが)象は(本当に)鼻が長い」……等々
英語などの言語では、単語の位置で[主語]-[述語]-[目的語]などの役割が明確に決められる。しかし日本語では、そういった文法的な役割が曖昧でも(私たちの間では)通じる
しかし近年のAIの発達に伴い、翻訳を自動化する技術展開の中で、日本語の使い方を論理的に解明することが求められるようになってきている
例えば、レストランで注文するときに、「何にする?」と聞かれて「ボクはハンバーグ」と答えることがあるが、これを英訳するときに、字句どおり「I am humberg.」では誤訳になる。文脈を判断して適切な表現をしなければならない
このことは、外国語訳の場合だけでなく、同じ日本人の間のコミュニケーションでも求められるようになってきている
最近、テレビの番組やネット上で、「ディベート」や「論破」という言葉が飛び交い、論理的に話すことが流行っている
しかし、言葉遣いを論理的に展開し、「あなたは何を注文しますか?」「ボクはハンバーグが食べたい」というような言い回しに“是正”することが本当に必要だろうか?
言語学者、エッセイストの外山滋比古氏は、ある選挙の街頭演説の様子を例に出し、次のように説いている
紹介された候補者が「わたしが○○です」と言ったところ、
聴衆の中から「いばるな!」という声があがった。
「(ご存知でしょうが)わたしが○○です」と、威張っている
ようだというのであろう。
「わたくしは○○です」ならいいがやはりすこし落着かない。
「わたくし」がじゃまで、ただ「○○と申します」とする方が、
しっくりする。日本語では「わたくし」をできれば落とすの
が作法であり〝 滅私〝の心をあらわすことが出来る。
「何?」「ハンバーグ」という会話でも済むような人間関係を築く時間を、丁寧に持つことこそが大切なのだと、ワタクシは(と、あえて言いますが……)思う
そして、AIにも、日本語がそういう言語なのだということを理解させる必要があるのだろう
「日本語は含蓄が深い」
(さて、この主語はなんでしょう?)
(光裕) .