2020.10.2 号

七十二候では「蟄虫坏戸(むしかくれてとをふさぐ)」となり、寒さをおぼえた虫たちは、冬ごもりの支度をはじめる頃とのこと。

まさに、あれほど暑かった夏がすっと終わり、すっかり秋となったことを実感するこの頃ですね。その後いかがお過ごしでしょうか。

さて、私どもは、8月16日にHappy Toco Liveを再開し、9月6日も無事にLiveを終えることができました。


お客さまから「待っていました!」とのお手紙をお寄せいただいたり、「次こそは参加したいです」とのご連絡をいただいたり、ありがたく思っております。


次回のLiveは12月13日に、とお知らせしておりましたが、その前にもぜひとのご希望が多くありましたので、急遽、11月23日(祝・勤労感謝の日)にもLiveをおこなうことにいたしました。


ちなみに、新年は、1月31日、2月7日とLive開催を予定しております。

状況によっては、また変更などせざるをえないこともあるかもしれませんが、まずは、こうしてご案内できることをうれしく思っております。

まずはスピンオフから

前号のクラブ通信でお伝えしたとおり、先週26日に「アラヤード・ピクニック」スピンオフ企画を実施した。

この状況下、様々考えなければならないことは多かったが、一番心配されたことは、仙台から秋田に赴いて数日の準備期間を経て開催する私たちに対して、お客様がどのように感じられるか、事前にはなかなか判断できなかったことだ。海外であれば、帰国後2週間以上の自宅待機をしなければ、公の場に出ることは難しい。近況での仙台市での新規感染者数は、ずっと一桁で推移しており、東京・大阪など首都圏と比べれば明らかに少ないのだが、これまでの感染者累計は、秋田に比べれば10倍近く。「いつ、だれが、どのように」感染するかまだ解明されない中で、少しでも感染者数の多い地域からの来訪者に対して不安な気持ちを抱くのは、当然のことだろう。今回、この状況を受けて新たに使用することになった「ArayaHouse」音楽室は、お客様の様々な条件を考慮して、座席数を減らし換気を確保すべく、できる限りの入念な準備を施した。


しかし、そのような懸念は、当日演奏会にいらしたお客様の温かい眼差しと拍手に接した瞬間に一気に吹き飛んだ。皆さんが再開を待ち望んでくださっていた気持ちを、このような環境下だからこそ、なおさら強く感じられたのかもしれない。この温かい気持ちは、音楽会の後、柴田有紀さんによる展覧会と講演会、食事会、そして読書会に参加していただいた皆さまからも届けられた。これまでの半年に及ぶ閉塞感が、広く澄み切った空間に霧散していくのを感じた。


もちろん、状況はまだ予断を許さない段階で、緊張感を保ちながら……それでも、今後やってくる明るい「新たな日常」を信じながら、HappyTocoとしての活動もペースを取り戻していきたいと思う。

(光裕)

人の心

9月19日から「イベントの開催制限の緩和」とのことで、一部の映画館やコンサートホールでは、すべての座席を対象にチケットを販売し、上映、上演をおこなっているとのこと。

「間隔を開けて」というフレーズに慣れた感覚には、びっしり人員が入ってすぐ隣にも誰かがいる、という元の状況がむしろ違和感、というかたもいらっしゃるのかもしれません。


"コロナ禍"には、ほんとうにさまざまな問題があり、とても複雑で深刻だと感じます。

本来であれば、そういうときこそ、音楽や、会食が、人を慰めることを担ってきたはずだけに、私どももお役にたてれば、と思うものの、なかなかままならず……。

もどかしい思いです。


と同時に、私どものような演奏者、舞台人などは、随分と先まで仕事のキャンセルがなされ、飲食店主、旅館主などにしてみれば、なかなかお客さまが戻らず、みなさまに喜びや安らぎを、という立場である者自身が、つよいダメージを受け続けています。


社会的には、政府が新たな方針を出したのだから、状況はだいぶよいのでしょう、と捉えられがちですが、状況というのは、お一人お一人のお心が決めるところもあり、私どもの仕事では、主催者のお考え、会場主のお考え、お客さまのお考え、さまざまなお立場でのお考えが判断を左右します。


具体的なことでいえば、11月29日には、ひさしぶりに、秋田・English Cottageでコンサートを再開することになりましたが、これまでは、定員33名であったところ、いましばらくはまだ、15名までとしてほしい、と会場主からの通達がありました。

お察しいただけることかと存じますが、少人数のお客さまでは、なかなか採算が合わず、かといって、お一人ずつから多くをいただくわけにもいかず、会場代、調律費、交通費だけでもまかなえるかどうか……、というのが実態です……。

それでも、私どもが主宰、主催しているものについては、私どもが責任を負う前提ではありますが、開催することを決断できるだけでも、判断の自由が残されている、とも言えるのかもしれません。


苦渋の中にあっても、私どもにかぎらず、音楽家も俳優たちもみな、懸命に模索することをやめないのは、「心から好きなことだから」、「使命感をもってやってきたことだから」、「きっとこういう風潮の中でこそ、まもなく必要とされるか……」と信じる思いがあるから……。何とか持ちこたえている、持ちこたえようとしている、という現状だと思います。

この状況がどれくらい、どのように長引くか分かりませんが、お客さまにお力をいただきながら、舞台人も、料理人も、心が折れてしまわないように……と改めて思うこの頃です。


私どもにしましても、Happy Toco S Clubでご支援くださったみなさまからの温かい応援のお気持ち、活動継続への期待のお声に、きちんとおこたえしていきたい、という自らの思いを自身の心の支えにしているところです。


物理学者で随筆家でもあった寺田寅彦が、昭和十年十一月に「小爆発二件」と題して書かれた文章に、「ものをこわがらな過ぎたり、こわがり過ぎたりするのはやさしいが、正当にこわがることはなかなかむつかしいことだと思われた。」とありました。


ウィルスの問題と同様に、あるいは、ときに、それ以上に難しいのが、人の心のありかたなのかもしれません。

(聡子)

ドラム小物

数年前から使い始めたサーフィン用のワックス。

何に使うかというとスティックの滑り止めです。

重さや形、材質によって音が変わるスティックですが何より手に馴染むものでないと演奏に集中できないもので、ずっと自分に合うものを探していましたが奏法を変えてからはこれというものが見つからず……

そんな時に知ったのがこれの存在でした。

詳しく説明すると長くなるのですが、市販のドラム用の滑り止めでは対応出来ないこともこれなら大丈夫。

おかげで以前ほどサイズに悩むことなくサウンド重視で選べるようになりました。

使わなくて良くなる日も来るかもしれませんが、今は欠かせないアイテムです。

(雅裕)